この記事は、英語のT2(補助教員)として働き始めて1年半経った、本当は英語の教員免許を持っていないほっこりがお送りしております。
1年目は何もかもが初めてだった私。インドで散々っぱら出川イングリッシュを繰り出してきた私が、最初に中学英語の教科書と向き合った時に最初に思ったのは、「そうだ、過去形、そんなものがあった」であった。
インドで1回も過去形を使わなかった自信しかない。いわんや未来形をや。いつも今を生きていて、毎日の終わりに「今日も生きていられた」と生きてる実感を噛み締める日々を送っていたのだから、過去形なんて使う余裕はなかったのだろうと思うけど、そもそも頭の中に過去形という選択肢がなかったという事実に、やっと気づいた瞬間なのであった。
そんな私が2年目になり、少しずつ慣れてきて、担当している単語テストにも小ネタを挟もうとするようになってきた。そんな時、ネタとして何が現代の中学生に通じるのか、彼らが何を知っていて、何を知らないのかがわからないといういわゆる「世代差」を思い知ることとなる。何だったら私が組ませてもらっている24歳や27歳といった、いわゆる平成生まれとの誤差もすごいことになっている。
例えば中3の単語に「species」(種)という語がある。speciesと言えば、映画のタイトルですよね?
と思って、「昔、こんなタイトルの怖い映画あったよね」と言っても誰も知らない。それもそのはず、これが公開されたのは1995年。2008年生まれの生徒はおろか、1997年生まれの27歳の先生がささっと調べてくれて、「あ、私、生まれていません」という。そりゃ誰もわからないわね。怖い映画だったから観てなかったけど、後からよく調べたら、かなり大人向けのエロい内容で、授業で紹介するような映画でもなかった。逆に通じなくてよかった。
例えば中2の単語に「between」(〜の間に)という単語がある。私より少し上の50代後半の英語の先生が、「こういう名前の歯ブラシがあるよな!え?知らない?」と言った。
ライオンから現在も販売されているが、残念、コマーシャルがやっていたのは大昔。そのコマーシャルでこの単語を覚えたのは50代以降だと思う…。まあ、現在も売ってるのでこれはギリギリセーフか?
この先生はその後、雑談の中でも「好きなおでんのネタは何」という質問に生徒が「がんもどき」と答えたとき、「グーグーガンモ」というアニメのタイトルを生徒に教えていた。これまた随分と懐かしい。そしてほぼ同世代の先生方がこのように世代が邪魔して通じない小ネタを授業にさし挟みながら頑張っているんだなと涙を禁じ得なかった私であった。
中2の単語に「bump」(名詞…でこぼこ、動詞…ぶつかる)という単語があるのだが、この時私は思った。私の中で比較的新しい小ネタを挿入する時が来た、と。そう、私が連想したのは「bump of chicken」である。これなら中学生にも「あっ!知ってる!」と言わしめるに違いない。とにかく単語というのは、強く他のものとイメージを繋ぎ合わせ、印象付けて、記憶を強化させたいものなのである。私は言いましたよ、そのバンド名を。そしたらどうでしょう。中学2年生でその名前に反応したのはクラスで1人だけ。そして1番すごく反応してくれたのは、24歳の若い先生であった。
「えっ、お前ら、bump of chicken、知らないの?彼らは高校の文化祭でデビューしたバンドで、とにかく凄いんだぞ?!米津玄師とか、めちゃくちゃ影響されてるしリスペクトしてるんだからな?!」と怒り気味に熱く語ってくれた。そう、これなんだ、こういう反応が欲しかったんだ、生徒に…。私が思う最近の若者の話題というのが既に10年くらいは軽くタイムラグがあるのだということが証明されたのであった。小ネタを挟もうとするたびに、ちょっとした賭けをしないといけないという、ギャンブル精神を刺激されちゃうのです。20代の時に国語を教えていた時はこんな事一度もなかったのになぁ!
この世代差というものをどうにか何かに利用できないかと思う今日この頃なのであった。
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